連載 つらつらNPノート・7
転倒・転落の予防
鈴木 美穂
pp.1013
発行日 2011年10月10日
Published Date 2011/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102233
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転倒・転落(以下,転倒)は褥瘡などと並び,メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)が指定する,入院中に決して起こるべきではない10個のHAC(hospital-acquired conditions)のひとつである1)。つまり入院中の転倒によって患者が負傷した場合,エビデンス・ベースドのガイドラインによって予防できたとして,その治療に対する診療報酬は保険からは支払われず,施設の負担となる。
先日,この考え方に反対すべく,高齢者の入院中の転倒は予防できないとするレビュー論文が発表された2)。論者らは患者教育や視力のアセスメント,歩行介助用具の使用などを含む包括的な転倒予防プログラムが効果的であるという証拠はなかったと結論づけた。また,多くの患者はパーキンソン病や骨粗鬆症,脳卒中の既往,失禁,栄養不良,めまい,視力や聴力の問題などの転倒に寄与する内因的リスクを抱えており,短い入院の間にこれらを管理するのは困難だという3)。患者には院内でも在宅でも同じような,むしろ院内では高いリスクがあるのに,在宅で転倒して,それによる負傷のための入院ではその治療費は保険から支払われ,入院中では予防できたとして施設の責任とするのはおかしいという話だ。賛成である。
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