おさえておきたい転倒・転落予防の基本知識と現場での応用
2.転倒・転落の主な原因と対策:① 加齢とADL低下
吉村 芳弘
1
1熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター
キーワード:
筋力低下
,
低栄養
,
認知レベル
,
薬剤
,
環境調整
Keyword:
筋力低下
,
低栄養
,
認知レベル
,
薬剤
,
環境調整
pp.1206-1211
発行日 2024年11月15日
Published Date 2024/11/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033121206
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はじめに
高齢化に伴い高齢者の転倒と転倒に関連する有害事象が社会的な関心事項の1つとなっている.米国の調査で65歳以上の地域居住者の29%が年に1回以上転倒し,1人当たりの年間の転落率は0.67回である 1).大規模研究では,地域高齢者の10%が年に2回以上転落する 2).転倒後, 高齢者の4分の1が少なくとも1日は日常生活動作(ADL)や身体活動を制限し,医療機関を受診する 1).骨折,関節脱臼,捻挫や筋緊張,脳震盪等のより重篤な損傷は,転倒の約10%で発生する 3).転倒後,それまで恐怖心がなかった人の21~39%に転倒恐怖症が発症し,転倒恐怖症の人はADLや身体活動を制限してしまうため,生活の質(QOL)が低下しやすくなる 4).高齢者の転倒により,米国では年間280万件の救急外来受診と80万件の入院が発生しており 1),総医療費は495億ドルに上る 5).転倒後の骨折を含む有害事象は国家レベルで大きな財政負担となっている.超高齢社会を迎えたわが国においても,高齢者の転倒,骨折の予防は生命予後だけでなくADLやQOLに及ぼす影響が大きく,要介護や寝たきりの主要な原因となる.
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