リハビリテーション科医師に必要な診察,評価手技
8.半側空間無視
松田 佳奈
1
,
新堂 晃大
1,2
,
百崎 良
3
1三重大学大学院医学系研究科認知症医療学講座
2三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学
3三重大学大学院医学系研究科リハビリテーション医学
キーワード:
半側空間無視
,
行動性無視検査
,
線分抹消検査
,
行動性無視検査
Keyword:
半側空間無視
,
行動性無視検査
,
線分抹消検査
,
行動性無視検査
pp.1109-1113
発行日 2024年10月15日
Published Date 2024/10/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033111109
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はじめに
半側空間無視とは,大脳半球にある病巣と反対側の空間にある対象が意識にのぼらなくなる症状であり, Heilmanら 1)は「大脳半球損傷の反対側に提示された刺激を報告したり,刺激に反応したり,与えられた刺激を定位することの障害」と定義している.どちらの半球の病変でも起こり得るが,右半球病変による左半側空間無視が一般的であり,脳卒中の急性期では約40%に認められ,回復期においても軽度ながら存在するものを含めると左半側空間無視が30%程度にみられる2).左大脳半球損傷における右半側空間無視は,脳卒中の急性期にみられることがあるが,改善して目立たなくなる例がほとんどである.
責任病巣としては,下頭頂小葉に属する角回と縁上回,上側頭回等が重視されている.しかし,前頭葉や視床枕,内包後脚等に限局した病巣でも半側空間無視が起こり得る 3).半側空間無視は,食事の際に片側に手をつけない,車椅子ブレーキの片側をかけ忘れる,片側の壁や障害物への衝突等,日常生活場面でさまざまな問題が生じる 4).また,リハビリテーションを行ううえでの大きな阻害要因となり, 最終的なADL(activities of daily living)の予後に大きく影響することが報告されている 5).
本稿では,ベッドサイドでの簡便なスクリーニング,多面的な評価バッテリーである行動性無視検査(behavioural inattention test;BIT),日常生活上に現れる無視症状を評価するCatherine Bergego Scale(CBS)の3つの評価についてそれぞれ述べていく.
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