特集 半側空間無視
半側空間無視のメカニズム
森岡 周
1,2
Shu Morioka
1,2
1畿央大学大学院健康科学研究科
2畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター
キーワード:
半側空間無視
,
メカニズム
,
背側注意ネットワーク
,
腹側注意ネットワーク
Keyword:
半側空間無視
,
メカニズム
,
背側注意ネットワーク
,
腹側注意ネットワーク
pp.855-863
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551200994
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はじめに
半側空間無視(unilateral spatial neglect:USN)は,大脳半球病巣と反対側の刺激に対して応答できない,あるいは無視空間に視線を向けることができなくなる病態と定義されており1),右半球損傷後に生じる神経学的症候の一つである.USNは感覚障害や運動障害では説明できない反応の低下や欠如を示す現象として知られており2),現在では,無視空間に対する注意の欠損を示す病態として,脳損傷後に起こる高次脳機能障害として広く認知されている.
古典的にUSNは頭頂葉症候群と考えられてきたが,近年では注意ネットワーク症候群として再考されるようになり,その病態の根幹には,外部刺激に対して応答することが難しくなるといった受動的注意の低下があると指摘されている3).USNの出現は基本動作やADL動作に負の影響を及ぼすことは言うまでもないが,理学療法においては,車椅子駆動や歩行など,移動を阻害する機能障害の一つとして認識されている.
本稿ではUSNのメカニズムと題して,これまでのUSNに関する基礎的研究について概観するとともに,ここ最近の発展的研究によって明らかになってきた空間性注意障害としてのUSNのメカニズムに絞って解説したい.
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