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はじめに
わが国では義肢・装具を調達するのに公的支給制度を利用することが多い.脳卒中片麻痺患者に用いられる短下肢装具の価格は5万円程度であるが,大腿切断における義足は80万円を超えてくることも珍しくない.義肢・装具の必要性は長期に及ぶが,残念ながら義肢・装具そのものは一度調達すれば生涯にわたって使えるものではなく,定期的な更新が必要である.障害を負って収入も減少していると思われる障害当事者にとって,義肢・装具の調達費用を支援してくれるわが国の公的支給制度の存在は大変ありがたいものである.
義肢・装具はわが国では医療機器ではないとされており,製造・販売において薬機法による厳格な制約を受けない.そのため,医師の関与が全くなくても義肢・装具そのものを調達して使用することは法的には可能である.しかし,義肢・装具の調達において「公的支給制度を利用する」場合には,制度の要件として証明書や意見書等医師の関与が必須となっている.公的支給制度の原資には少なからず税金も投入されているため,その障害当事者は本当に義肢・装具が必要な状態で,提供される義肢・装具は障害像にマッチしているか,といった公金支出の妥当性を担保する必要があるので,支給に際して医師の関与を義務付けていると筆者は考える.
欠損や麻痺等の機能障害を負って最初につくる義肢・装具は治療用義肢・装具として医療保険を用いることが多く,その後の修理や再作製からは更生用義肢・装具として障害者総合支援法を用いることが多い.他にも労災保険や生活保護法が適応になる場合もある.それぞれの制度には根拠となる法令があり,それにより制度の理念が定められており,これを踏まえて運用方法が決まってくる.
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