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内容のポイント Q&A
Q1 誤嚥性肺炎による嚥下機能低下が遷延するメカニズムは?
誤嚥性肺炎を起こした後は,嚥下関連筋群の筋肉量低下による嚥下機能の障害だけでなく,全身の廃用症候群をきたしている.そしていったん筋萎縮が起こると高齢者では回復困難なことが多い.そして誤嚥性肺炎を起こす患者は,発症前からサルコペニアであった可能性が高い.すなわち全身の機能低下と発症前からのサルコペニアの結果として誤嚥性肺炎を発症しているため,短期間に改善を得ることが難しく,誤嚥性肺炎による嚥下機能低下は遷延する場合が多い.
Q2 長期的な治療戦略は?
嚥下機能改善訓練のみでは不十分であり,全身に起こった廃用症候群による機能低下を改善するため,筋骨格系,呼吸器系,消化器系,循環器系,精神系を含めた包括的なリハビリテーションを施行する必要がある.誤嚥性肺炎は慢性低栄養,サルコペニアの悪循環が生じた結果として発症する場合が多く,悪循環を断ち切るために,胃瘻から確実に栄養投与することも選択肢の1つである.さらに経口摂取活動の低下の原因としてフレイル対策が重要である.特にオーラルフレイルに関しては,訪問歯科での確認を行い,歯科受診および歯科衛生士による指導が望ましい.
Q3 経口摂取再獲得のために必要な体制をどのように強化するか?
誤嚥性肺炎の治療は嚥下機能だけではなく全身の機能,経口摂取にかかわる活動,社会的フレイルにかかわる参加,環境因子,精神的・身体的フレイルに影響を及ぼす個人因子がかかわっている.すなわち包括的な評価を行う必要があり,国際生活機能分類(ICF)を利用して評価を行うことが推奨される.臨床現場では,ICFに基づいた連携シートを地域全体で利用するクリニカルパスの運用体制構築が望まれる.地域連携クリニカルパスを用いると,従来型の診療情報提供書よりも情報の質,量とも優れていることが示されている.誤嚥を起こさない食事の提供を続けるため,地域間で食事形態の名称を統一して運用することが必要である.
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