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summary
【背景】うつ病による食欲不振から経口摂取量が減少したため,必要栄養量確保のため胃瘻を造設し,食事を諦めていた特別養護老人ホーム(以下,特養)の新規入居者に栄養介入を行い,経口摂取へ移行した症例を経験したので報告する.
【症例】80歳代,女性.在宅生活を送っていたが,胸椎圧迫骨折にて入院加療後,リハビリテーション(以下,リハ)目的にてリハ病院に転院した.1年後に食欲不振のため入院精査するも原因は判明せず,長期的な経管栄養の必要性が考えられたことから,本人,家族と相談の結果,胃瘻造設となった.経過良好にて介護老人保健施設(以下,老健)に転院後,特養入所となり1),食べたいことに意欲的な発言があったため,経口移行に取り組むことになった.
【経過】介入前1年間の体重減少は20 kg,低栄養状態は高リスクであり,胃瘻造設後も低体重で,食具を持つことも困難なフレイルの状態であった2,3).摂食嚥下障害を専門とする訪問歯科医師と主治医に,老健での経口摂取を特養でも継続する指示を受け4),3食の経口摂取を目標に栄養介入を開始した.本人は,「食べたいけど,苦しかったから,食べたくない」と不安を訴え,食欲不振は続いていた.経口摂取開始は困難であったが,必要栄養量は経管栄養で充足できていた.介入日+2カ月,正月のおせち料理を食べたいという希望があり,ソフト食のおせち[日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類20215)(以下,学会分類)のコード3]を食べたことを契機に,昼食のみ経口摂取になった.朝食も,ケアスタッフが納豆を勧めると食べられるようになった.しかし,介入日+10カ月後,食事摂取量の不足から体重が減少し,経口摂取だけでは必要栄養量の確保がむずかしいことがわかった.そこで,経管栄養投与量を増量し必要栄養量を確保しながら,歯科医師,ケアスタッフ等,多職種による姿勢の調整,食具の工夫により食事量,体重ともに維持が可能になり,朝食と昼食の経口摂取移行に至った.夕食は,介入日+12カ月時点では経管栄養であった.
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