連載 栄養指導・栄養管理に活かしたい 食物繊維学の新常識⑨
食物繊維と循環器疾患
佐藤 匡央
1
Masao Sato
1
1九州大学大学院農学研究院 栄養化学分野
キーワード:
粥状動脈硬化症
,
コレステロール
,
変性LDL
,
ビタミンE
,
水溶性食物繊維
Keyword:
粥状動脈硬化症
,
コレステロール
,
変性LDL
,
ビタミンE
,
水溶性食物繊維
pp.342-347
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.32118/cn145030342
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はじめに
食物繊維の摂取は,さまざまな疾患に対して予防的効果を発揮するといわれてきた.しかし,この言説は少し疑っていいようにも思える.現在の見解では,ヒトの体は食物繊維を摂取することを前提としてできており,摂取不足は消化管の重篤な疾病,とくに大腸癌の発症に関連することが議論されている.ただし,目標量より多く摂取したからといって,そのリスクが低下することはないとされている.また,食物繊維摂取と直接影響する消化管での出来事はよく研究されており,近年は食物繊維(プレバイオティクス)と腸内細菌との関係,さらに食物繊維が資化されて,新たに生産される物質(とくに短鎖脂肪酸)と疾病の発症に注目が集まっている.
一方で,消化管と違い,体内にある血管への食物繊維の作用は,①循環器疾患の原因物質になる食品成分の吸収阻害,②腸内でできる新たな物質が吸収されて作用を及ぼす,の2つである.①の吸収阻害の研究は1870年代からはじまっており,食物繊維の吸着性を焦点に研究されてきた.とくに,糖,脂質,ミネラル,ビタミンなど必要栄養素の吸収阻害をしてかえって健康を損なうのではないかという議論も行われている.
本稿では,循環器疾患,とくに発症数も多く,関連も深い粥状動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症)の発症と食物繊維摂取との関連を述べたい.
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