連載 医学ジャーナルで世界を読む・7
食物繊維とスピリチュアリティ
坪野 吉孝
1
1東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
pp.490-491
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100912
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・食物繊維と大腸がんをめぐる研究
「食物繊維を多く食べると,大腸がんの予防になる」.この仮説を,「事実」「常識」と考えている人は多いかもしれない.けれどもこの数年,この「常識」を否定するデータが次々と報告されてきた.例えば,米国看護師(1999年),フィンランド男性(1999年),スェーデン女性(2001年)の前向きコホート研究は,いずれも食物繊維の大腸がん予防効果を認めなかった.また,大腸ポリープの再発予防についてのランダム化比較試験が,2000年に3件報告された(米国2件,欧州1件).いずれも,食物繊維のサプリメントや,食物からの繊維を増やす教育をしても,ポリープの再発率は下がらなかった.そのため欧米の学会などでは,「食物繊維-大腸がん仮説」はもはや「過去の話」であり,「研究を止める時期ではないか」という声すら上がっていた.
そんな中,食物繊維と大腸がんについて2件の前向きコホート研究が報告された.第1の研究は,カナダ女性45,491人を平均8.5年追跡し,487例の大腸がん罹患を確認した(表の1).食物繊維の摂取量が下位20%のグループと比べて,上位20%のグループの大腸がん罹患リスクは0.94倍だった.つまり,食物繊維による大腸がんリスクの低下を認めず,最近の研究と一致する結果だった.
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