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はじめに
「日本人の食事摂取基準」が現在,改定されているところであり,まもなく2025年版の確定稿が完成すると予想されます.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では,最新のエビデンスに合わせて,いくつかの項目に改定が加わっています.また,水の必要量についての記述が豊富になり,はじめて水の必要量に関する参考数値の表が掲載される見込みです.栄養学の進歩とともに栄養所要量・食事摂取基準は改定されてきましたが,まだ日本人でのエビデンスが不十分である項目もあり,食事摂取基準に関する継続した研究の必要性は高いと言えます.栄養計算においては,日本食品標準成分表の数値に依拠しますが,7訂から8訂に改訂された際,とくにたんぱく質,エネルギーや食物繊維の部分での値の求め方に大きな変化があり,これまでとの値の比較には注意が必要です.とくに,食事摂取基準の策定の根拠となる論文は7訂までの食品成分表を参照しているものが多いため,今後は8訂の食品成分表をもとにした研究の蓄積が新たに必要となってきます.
推定エネルギー必要量(estimated energy requirement:EER)という概念は重要であるものの,その数値を個人ごとに求めることには困難がともなうことから,食事摂取基準では,エネルギー摂取の過不足の回避を目的とする指標としてBMI(body mass index)が採用されている点で国際的に非常に独創的であると言えます.そのうえで,参考資料としてEERの算出方法が記載されています.食事摂取基準におけるEERの算出方法は集団平均値を求めるには適切である一方,個人のEERを求めるには誤差が大きくなる可能性もあり,簡便さと正確さの両立がきわめてむずかしいです.そこで,本稿では,筆者が考える個人におけるEERの推定の方法について,述べてみたいと思います.
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