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摂食嚥下障害患者に対し,食形態の調整や食べ方の工夫が経口摂取の手助けとなる.不適切な形態の食事は低栄養につながり,また,低栄養は摂食嚥下障害のリスクであり,さらなる低栄養に陥るという負の連鎖はよく知られている.今回,形態調整食の受け入れが悪く食事摂取量が低下していた患者が,ミールラウンドと多職種による栄養指導によって安全な食事摂取が可能となった一例を経験したので報告する.
【症例】70歳代後半の女性.右腰背部痛により救急受診し,甲状腺癌の右腎転移による腰痛の診断で入院となった.摂食嚥下機能評価の結果,嚥下調整食の摂取を推奨されたが,本人・家族ともに形態調整食への拒否感が強く,普通食摂取の希望があった.化学療法施行の方針となり,入院の長期化が予測されたが,食事摂取量低下と体重減少があったため,栄養改善に取り組むこととなった.
【経過】ミールラウンドにて情報収集し,栄養指導内容について他職種と情報共有した.食形態の調整は安全に栄養摂取するための方法であること,形態調整しても栄養摂取ができることを多職種により繰り返し患者に説明した.本人の希望を取り入れ,個別に調整した食事を提供し,栄養補助食品(oral nutritional supplements:ONS)の併用と手元での食形態調整により,退院後も安全な食事摂取と栄養量が確保できるよう準備を進めた.
【考察】摂食嚥下機能に不適応な食形態へのこだわりがある患者に対し,管理栄養士がミールラウンドを行うことで,患者の希望を取り入れた栄養管理を行うことができた.また,栄養指導内容を情報共有することで,さまざまな職種から繰り返し説明を受けることができ,食形態調整の受け入れにつながった.食事を前に,献立内容や食べ方の説明を受けたことも,食形態調整の必要性を認識する一因となったと考えられる.摂食嚥下障害患者に対するミールラウンド時の情報収集および栄養指導,多職種での教育は,安全な栄養摂取に有効であると考えられる.
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