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summary
専門職種の少ない高齢者福祉施設において,摂食嚥下機能の評価には限界がある.今回,誤嚥による発熱が頻回に起こり,活動性が低下し,歩行もできなくなった利用者に対し,訪問歯科による嚥下内視鏡検査(VE)での評価から食事介助方法を変更し,歩行を再開したところ,誤嚥性肺炎が予防できた症例を報告する.
【症例】70歳代,女性.アルツハイマー型認知症.新型コロナウイルス感染症から回復したが,37℃台の発熱を繰り返すようになった.食形態を下げ,全介助での食事摂取へ変更したところ,発熱の頻度は減ったがむせ込みや食事中の鼻汁が頻回にみられた.食事摂取量7~8割となり,1カ月で5%の体重減少が認められた.移動は車椅子となった.
【経過】食形態,食事介助方法,ポジショニング等を見直すため,訪問歯科によるVEを実施した.その結果,日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(以下,学会分類)コード2-1でもややコード3に近い嚥下調整食は咽頭残留したため,交互嚥下ができるよう食事介助方法を変更した.水分は均質な中間のとろみ,あるいはゼリー類に限定して提供するよう徹底した.介入時+1カ月後に発熱がなく体調がよいときには手引き歩行を再開し,介入時+2カ月後には移動は歩行となった.推定摂取エネルギー量は,介入時に28 kcal/kg/日であったが,介入時+1カ月後は36.7 kcal/kg/日,介入時+2カ月後は33.8 kcal/kg/日となり,介入前に比べて増加した.体重は介入時には43.9 kgだったが,介入時+3カ月後は45.5 kgと増加した.
【考察】VEにより食形態の違いによる咽頭残留を目視することで,介護士の食事介助技術が向上し,むせの頻度を減らすことができた.また,食形態を下げて十分なエネルギー量を確保することで,身体機能の低下を防ぎ,歩行を早期に再開できた.その結果,全身状態が回復し,さらなる嚥下機能の低下を防いだことにより,誤嚥性肺炎を予防できたのではないかと考えられる.
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