Japanese
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特集 全身疾患の新たな危険因子としてのマイクロ・ナノプラスチック
はじめに
Introduction
下畑 享良
1
Takayoshi SHIMOHATA
1
1岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
pp.111-111
発行日 2026年1月10日
Published Date 2026/1/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu296020111
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- Abstract 文献概要
近年,マイクロ・ナノプラスチック(micro- and nanoplastics:MNPs)による環境汚染が世界的な関心を集めている.プラスチックは海洋から大気,土壌,飲料水,食品,さらには室内空気に至るまで広範に存在し,日常生活において回避困難な曝露因子となりつつある.MNPsは単なる環境汚染物質ではなく,生体内に侵入し,蓄積し,炎症,酸化ストレス,免疫調節異常といった生体応答を惹起する可能性が指摘されている.その科学的理解は,毒性学,免疫学,材料科学,生化学といった基礎領域から進展してきたが,近年は人体レベルの実証的知見が蓄積しつつある.2023年の『N Engl J Med』誌における前向き研究では,頸動脈内膜切除術標本の58%からポリエチレンを含むMNPsが検出され,MNPs陽性例では心筋梗塞や脳卒中などによる死亡リスクが有意に上昇した.また2025年には,認知症患者の脳組織に高濃度のMNPsが蓄積していることが『Nat Med』誌で報告され,中枢神経への影響も現実的な懸念となっている.さらに,大気中MNPsの吸入を介した肺胞レベルでの曝露は慢性炎症や線維化を増悪させる可能性が示されており,呼吸器領域においても重要な課題となっている.
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