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はじめに
機能性神経障害(functional neurological disorders:FND)は,筋力低下,感覚障害,運動異常症,けいれん発作など多彩な症候を呈する4,5).これまでさまざまな病名で呼ばれてきた歴史がある1).その中には,ヒステリー,心因性疾患,解離性障害,転換性障害,身体化障害,身体表現性障害,心気症,Munchausen症候群,詐病などが含まれる.近年,これらの病態に対する認識は大きく変わりつつある.具体的には,患者はかなりの苦痛と障害を伴うこと,症状は偽りではないこと,そして診療においてもFNDを示唆する陽性徴候(神経学的に説明できない徴候)から積極的に診断する必要があること(rule-in diagnosisという),患者・家族にFNDという病名を適切に説明すること自体が治療となること,必要がある場合には認知行動療法や理学療法を含めたチームによる集学的ケアを行うことである6).
このようなFNDに対する診断や治療に対するアプローチについて,Functional Neurological Disorder Society(FNDS)(https://www.fndsociety.org/)をはじめとする学会が啓発活動に取り組んでいる.後述するにように,本邦でも日本神経学会や日本臨床神経生理学会が,教育コースやシンポジウムを行ってきた.しかし,FNDの正しい診療が十分に浸透しているとは言い難い状況である.このため日本神経学会は,2022年に学会内の組織として「機能性疾患/精神科領域疾患セクション」を設置し,FNDに対する診療レベルの向上を目指した試みを開始した.本稿では,「機能性疾患/精神科領域疾患セクション」設置の経緯と今後の取り組みについて紹介したい.
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