神経変性と自己免疫：病態のオーバーラップ -――神経変性と自己免疫

Pathological overlap between neurodegeneration and autoimmunity

　近年，神経変性と自己免疫の病態には密接な関連性があることが明らかとなってきた．本稿では，自己免疫疾患における神経変性の視点からIgLON5抗体関連疾患を，神経変性疾患における自己免疫病態の視点からパーキンソン病（PD）とアルツハイマー病（AD）を取り上げる．IgLON5抗体関連疾患は多彩な神経症候をきたし，神経変性疾患の症候に類似しうる自己免疫性脳炎である．IgLON5抗体が神経細胞表面の抗原に作用し，視床下部や脳幹の被蓋部を主体とするタウの蓄積をもたらす．PDとADでは，T細胞・疾患関連ミクログリアの作用により炎症性サイトカインの産生や神経細胞死が誘導されることや，B細胞の作用によりさまざまな自己抗体が産生されることが確認されている．また，これらの自己免疫病態はアミロイドβ（Aβ）やタウの蓄積を増悪させる．神経変性・自己免疫両方の病態の関連性を認識することは，新規の作用機序を持つ治療薬の開発にも重要である．