遺伝子・ゲノム編集治療による心不全克服への挑戦 -――心筋症・先天性心疾患の未来

Challenges and prospects of gene editing therapy for heart failure

　心血管疾患，特に遺伝的要因が関与する心筋症や先天性心疾患は，従来の対症療法を中心とした治療法では限界があったが，ゲノム編集技術の進歩により根治的治療が可能になりつつある．具体的には，CRISPR-Cas9，Base editing，Prime editingをはじめとするゲノム編集ツールを用いて病原性変異（PV）を修正する研究が進み，モデル動物で心機能の改善が確認されている．遺伝子治療の実用化には，デリバリーシステムの開発が不可欠である．アデノ随伴ウイルス（AAV）や脂質ナノ粒子（LNPs）などの伝達方法が研究されているが，組織特異性や免疫原性などの課題が残されている．こうした技術的な課題に加え，倫理的・社会的な議論も必要であり，今後の発展には，精密な編集ツールの開発や安全性の検証，厳格な倫理審査が求められる．とはいえ，遺伝子・ゲノム編集技術は心血管医療に新たな時代をもたらす可能性を秘めており，今後ますますその研究動向が注目される．