欧米と異なる日本人のHFpEF -――新たな病態解明への挑戦

HFpEF in Japanese people differs from that in Western countries

　心不全の約半数を占めるHFpEF（左室駆出率が保たれた心不全）は，臨床背景が多様で治療法が乏しいことが課題である．欧米では肥満・炎症を基盤とするHFpEFが主流で，Hillらが確立した “two-hit” モデルマウスによりその病態が再現され，iNOS（誘導型一酸化窒素合成酵素）やXBP1経路を標的とした新規治療戦略が提示されている．一方，日本では肥満頻度が低く，高齢や血管硬化を背景としたHFpEFが主体であり，日本型HFpEFの病態解明および治療法開発が喫緊の課題となっている．筆者らは，加齢マウスで拡張障害が起こることを確認し，さらにheterochronic parabiosisにより高齢マウスの血中因子がHFpEFを誘導するといった知見を得た．日本型HFpEFには加齢モデルを用いた研究が必要であり，今後，血中因子の同定を通じた新規治療標的の発見が期待される．