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特集 造血幹細胞研究の革新と臨床応用への挑戦
造血幹細胞増幅がもたらす臨床応用と基礎研究の発展
Hematopoietic stem cell expansion
――Advancements in clinical applications and basic research
菊地 理子
1
,
錦井 秀和
2
Riko KIKUCHI
1
,
Hidekazu NISHIKII
2
1筑波大学医学医療系幹細胞治療
2同血液内科
キーワード:
造血幹細胞(HSC)体外増幅
,
造血幹細胞移植(HSCT)
,
遺伝子治療
,
HSC研究
Keyword:
造血幹細胞(HSC)体外増幅
,
造血幹細胞移植(HSCT)
,
遺伝子治療
,
HSC研究
pp.644-648
発行日 2025年11月22日
Published Date 2025/11/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295080644
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造血幹細胞(HSC)は骨髄中に0.001%程度存在する自己複製能と多分化能を併せ持つ幹細胞であるが,人為的に自己複製能を制御するのは困難であり,体外増幅技術の確立は幹細胞学者の大きな課題のひとつであった.近年,SR1やUM171などの低分子化合物や,PVAやSoluplus®といった高分子ポリマーの利用によりHSCの体外増幅効率は飛躍的に向上し,臍帯血移植において課題となっていた細胞数不足の克服が期待されている.すでに欧米では,ニコチンアミド(NAM)を用いた増幅HSCの臨床試験において生着期間の短縮や感染症リスクの低減が報告されている.また,ゲノム編集技術と組み合わせることで,遺伝子変異が正常に修復されたHSCクローンを選択的に増幅することが理論的に可能であることから,将来的な遺伝子治療への応用も期待される.一方,HSCの体外増幅技術は臨床応用のみならず,試験管内でHSCの挙動を観察するシステムとして応用できる可能性もある.HSCの不均一性・分化運命決定機構のメカニズムなどの細胞生物学的な特性を解明する実験系としても有用と考えられ,基礎研究における発展性も期待される.

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