Japanese
English
実験法
増幅
Amplification
平尾 武久
1
Takehisa Hirao
1
1群馬大学医学部第二生理学
1Department of Physiology, Medical Faculty, University of Gunma
pp.163-180
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431901514
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I.まえがき
生体の機能はその生体のためのものであつて,我々の研究の対象としてあるのではない。だから我々にとつては研究上甚だ都合の悪い事が多い。それでも我々は生体の機能の消長に恐らくは重要な関係のある,しかしその機能自体とは思えないような現象について研究している。例えば神経の細胞外導出による活動電位は,神経の機能にとつて非常に重要なものであるかも知れないが決して機能の全部ではないと考えねばならない。この様な機能上の一種のロスに近いエネルギー量はその全機能の持つエネルギー量に比べると甚だ少いものである。この放出エネルギーをなるべく忠実に又は我々に都合よくとらまえて本態を明らかにし更にそれによつて機能の一端を追求するという事になると,勢い微弱なこの種の変動を忠実に増幅して,我々の見えるものにしなければならない。生体の示すこの微弱な変化は,それが電気的,形態的,光学的,熱的な変化のどれであるにせよ何れかの形で増幅手段をとる訳であり,普通一度電気的なものに変換して増幅することが行われる。電気的な増幅は現代科学にとつては常当な手段である。しかし生理学の領域での増幅は実は現在の電子管を使用する限りは最大限度の技術を要求するものであつて,非常に困難である。それは入力インピーダンスが大きく,又入力電気量が微弱であるからであつて,多くの電子工学領域での増幅は適当に入力を大きくすることが容易であるから,この点生理学領域のとは異つてくる。
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