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はじめに
哺乳動物の中枢神経系幹細胞は,自己複製能と様々なタイプのニューロンやグリア細胞を生産する多能性を持っており,個体の発生初期から成体に至るまで,中枢神経系の様々な場所に存在し,その構築および機能維持に関与していると考えられている。そして,この神経幹細胞のポテンシャルは,それを利用することによって,これまで困難であった特定の神経変性疾患および外傷の治療に,新しい方向性と可能性を与えるものとしても認識されている。例えば,胎児や成体から神経幹細胞を分離し,in vitroで増殖させ思い通りに分化させることができれば,細胞移植による治療に応用できる。また外来遺伝子を導入することによって,遺伝子治療のプローブとしても利用できる。さらに,内在性の神経幹細胞を活性化し,新たなニューロンやグリアを生産させることも可能である。実際,1990年代初頭に幹細胞のFGF-2やEGFなどの細胞増殖因子を利用した選択的培養法が確立されて以来13,32,33),その後の多くの研究によって神経幹細胞の生物学的知見が蓄積されており,そして,それらと同時に神経変性疾患および外傷の治療への応用へ向けて,様々な疾患モデル動物などへの幹細胞移植もすでに行われており,一定の成果も上げている。しかしながら,ヒト神経幹細胞を利用したこれらのアプローチには数多くの問題も存在する。
A decade ago, the discovery of culture protocols to expand rodent neural stem cells in vitro brought us a possibility of a new therapeutic approach by an efficient cell transplantation to achieve central nervous system regeneration in human. Recently, human neural stem cells were identified and the developments of long-term maintenance and differentiation protocols in uitro have been proceeding toward their clinical application.
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