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第1土曜特集 生体システムのレジリエンス――神経–免疫–内分泌連関から探る適応と修復のメカニズム
神経系疾患における末梢由来免疫細胞
Peripheral immune cells in neurological disorders
伊藤 美菜子
1
Minako ITO
1
1九州大学生体防御医学研究所アレルギー防御学分野
キーワード:
免疫細胞
,
アルツハイマー病(AD)
,
脳梗塞
,
自閉スペクトラム症(ASD)
Keyword:
免疫細胞
,
アルツハイマー病(AD)
,
脳梗塞
,
自閉スペクトラム症(ASD)
pp.73-77
発行日 2025年10月4日
Published Date 2025/10/4
DOI https://doi.org/10.32118/ayu295010073
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アルツハイマー病(AD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの神経系疾患では,脳内のミクログリアやアストロサイトによる炎症応答に加えて,末梢免疫細胞,特にT細胞や自然リンパ球(ILC)の関与が明らかになりつつある.たとえば,CD8+T細胞はADの進行に伴って脳内へ浸潤し,IFN-γの産生を介してミクログリアの活性化やミエリン障害を引き起こす.一方で,制御性T細胞(Treg)や2型自然リンパ球(ILC2)は,脳損傷後の修復を促進し,アンフィレグリン(Areg)やIL-10の分泌を通じて炎症制御と神経再生に寄与する.また,ASDでは妊娠中の母体免疫活性化(MIA)や出生後の免疫異常が脳の発達に影響を与え,IL-17系サイトカインやT細胞サブセットのバランスが社会性や不安様行動の形成に関与することが示唆されている.本稿では,これらの神経系疾患における末梢リンパ球の多様な機能に着目し,その病態形成と回復過程への関与について最新の知見を概説する.

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