連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・19
子どもの自己決定をいかに尊重するか
笹月 桃子
1,2
Momoko SASAZUKI
1,2
1早稲田大学人間科学学術院
2九州大学大学院医学研究院成長発達医学分野
キーワード:
子ども
,
自己決定能力
,
協働意思決定
Keyword:
子ども
,
自己決定能力
,
協働意思決定
pp.599-602
発行日 2025年8月23日
Published Date 2025/8/23
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294080599
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Case 思春期のがん患者が治療に合意しないとき
患者Aは13歳,中学1年生の男児.成長発達歴に特記すべき問題はない.12歳のときに急性リンパ性白血病を発症し,化学療法を行い,いったん寛解に至っていたが,治療終了して半年たったところで再発と診断された.主治医はAと両親に,造血幹細胞移植を行うことを提案した.話を聞いた両親はすぐに同意したが,Aはふたたび入院して治療を受けることを固辞している.主治医は説明を尽くし,あわせて初回治療の頃から関わっていた看護師や院内学級の教諭がAとの対話の場を設け,治療しなければ生命に関わることも共有したが,初発時の治療があまりにも辛く,やっと終えて学校生活に戻れた矢先に,今からもっと強い治療をしなければならないこと,中学校の仲間と離れることは,とうてい受け入れ難いと,Aは移植治療に同意しない.Aの意向をどのように尊重できるであろうか.

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