連載 ケースから学ぶ臨床倫理推論・16
善行を果たせるか
長尾 式子
1
Noriko NAGAO
1
1北里大学看護学部臨床看護学
キーワード:
認知症の患者
,
身よりのない患者
,
患者の権利
,
尊厳
,
最善の利益
Keyword:
認知症の患者
,
身よりのない患者
,
患者の権利
,
尊厳
,
最善の利益
pp.253-258
発行日 2025年7月19日
Published Date 2025/7/19
DOI https://doi.org/10.32118/ayu294030253
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Case 入所施設の基準 vs. 善行優先――入所施設の基準より善行を優先するべきか
認知症でグループホーム入所中の患者Cさんは70歳女性で,下血を認め,検査の結果,S状結腸がんであることがわかった.医学的にはS状結腸切除術とストーマ造設の適応である.Cさんに治療のことを伝えたところ,手術をすると意向を示したが,時間をおいて説明した内容を確認すると,はじめて聞くような様子であり,説明した内容は覚えていない.しかし,手術をすることの意向は同じである.ただし,Cさんと同行するヘルパーによれば,「ストーマ造設となれば,現在入所しているグループホームでは対応できない」と言う.遠方にいる息子は,「今のグループホームに戻れないのなら手術して辛い思いをしてほしくない.ストーマ造設をしないほうがいい」と言う.
消化器外科の主治医Y医師から,病院内の臨床倫理コンサルテーションに,「患者の家族が,退院後に戻れる場所がないし,手術が本人にとって苦痛にしかならないと言って,治療に同意しない.手術しないことは倫理的に問題ないか」という問い合わせがきた.どのように対応したらよいか.

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