Japanese
English
特集 神経回路の機能発達と障害――基礎研究からヒト病態へ
ヒト生体脳でシナプス機能分子を “視る”
Visualization of AMPA receptors in living human brain
高橋 琢哉
1
Takuya TAKAHASHI
1
1横浜市立大学大学院医学研究科生理学
キーワード:
AMPA受容体
,
可塑性
,
PET(ポジトロン断層撮影)
,
[11C]K-2
Keyword:
AMPA受容体
,
可塑性
,
PET(ポジトロン断層撮影)
,
[11C]K-2
pp.1207-1211
発行日 2025年6月28日
Published Date 2025/6/28
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293131207
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
実験動物や培養細胞などを使ったシナプスの生理学の学問としての完成度・成熟度は非常に高いものである.一方で,その研ぎ澄まされたシナプス生理学のコンセプトをヒトの脳の理解や,さらにはヒトにおける精神神経疾患の病態解明に応用していくことは非常に困難であった.それゆえに,実験動物などの生物工学的マニピュレーションが可能なツールを使った,いわゆる “基礎研究” と臨床医学の間には大きな死の谷が存在し,その谷の大きさ・深さは免疫学や腫瘍学などといった他の分野と比べてとてつもなく巨大なものになっている.その困難さゆえに研究人口もそれほど多くなく,砂漠のような研究分野になっているのが現状である.その根本的な原因のひとつが,脳内情報伝達において最も中核的なシナプス機能を担っているグルタミン酸AMPA受容体を,ヒトで可視化・定量化する技術がなかったことにある.近年,筆者らはヒト生体脳でAMPA受容体を可視化・定量化できるポジトロン断層撮影(PET)トレーサー,[11C]K-2の開発に成功し,さまざまな病態におけるシナプス機能を解析してきた.本稿では,その開発と病態解析の最新の知見を紹介する.

Copyright © 2025 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.