Japanese
English
講座 失語症とリハビリテーション・第3回
機能回復と脳の可塑性
Recovery of aphasia and neuroplasticity.
井上 雄吉
1
Yukichi Inoue
1
1富山県高志リハビリテーション病院神経内科
1Department of Neurology, Toyama Koshi Rehabilitation Hospital
キーワード:
非侵襲的脳刺激
,
機能回復
,
可塑性
Keyword:
非侵襲的脳刺激
,
機能回復
,
可塑性
pp.1095-1102
発行日 2012年8月10日
Published Date 2012/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102627
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
失語症は脳卒中の急性期では患者全体の約1/3に合併してみられ,その多くは発症後6か月以内に改善するが,約10%では6か月後も残存して,日常生活や社会生活の大きな支障となり社会復帰の阻害因子となることはよく知られている1,2).このような失語症に対しては現在までさまざまな治療が行われてきているが,まだ十分とは言えないのが現状であり,より効果的な治療法の開発が望まれている.そのためには失語症の回復過程や回復機序の解明が非常に重要と考えられる.
近年,functional magnetic resonance imaging(fMRI)や,positron emission tomography(PET)などの機能画像,経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation;TMS)を反復して与える反復経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS;rTMS)や,経頭蓋的に弱い直流電気刺激を与える経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS)などの神経生理学的手法により,失語症や半側空間無視(unilateral spatial neglect;USN)などの高次脳機能障害の発症や回復の機序の解明が進んでおり,さらにrTMSやtDCSなどの非侵襲的脳刺激は比較的安全であることから,その治療にも応用されてきている3-6).
本稿では,失語症に対するrTMS治療を中心に,失語症の回復機序やその基になる脳の可塑性について述べていきたいと思う.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.