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特集 ストレス応答の分子メカニズム――最新知見と臨床応用への展望
酸素をめぐる生体応答とその生理的・病理的意義
Oxidative stress response and diseases
内堀 雄介
1,2
,
関根 弘樹
2
,
本橋 ほづみ
2,3
Yusuke UCHIBORI
1,2
,
Hiroki SEKINE
2
,
Hozumi MOTOHASHI
2,3
1東北大学大学院医学系研究科血液内科学分野
2同医化学分野
3同加齢医学研究所遺伝子発現制御分野
キーワード:
KEAP1-NRF2制御系
,
PHD-HIF制御系
,
PNPO-PLP制御系
Keyword:
KEAP1-NRF2制御系
,
PHD-HIF制御系
,
PNPO-PLP制御系
pp.580-586
発行日 2025年5月17日
Published Date 2025/5/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu293070580
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酸素を利用することにより,われわれは効率的なエネルギー産生を享受しているが,代謝過程で生成する活性酸素種は,生理的シグナルとして利用される一方,過剰になると細胞に損傷を与える.活性酸素種はがんや動脈硬化,神経変性疾患などさまざまな疾患に関与するとともに,免疫応答や老化にも関係し,酸化ストレスの適切な制御が健康の維持に重要である.KEAP1-NRF2制御系は,酸化ストレスに対する防御機構として中心的な役割を果たしており,NRF2の活性化はさまざまな疾患に対する治療への応用が期待されている.また,低酸素応答に関与するPHD(プロリン水酸化酵素)-HIF(低酸素誘導因子)制御系は腎性貧血の治療に使われ,他の低酸素病態への応用も進んでいる.さらに最近,筆者らは,活性型ビタミンB6(PLP)の生成を触媒するPNPOを新たな酸素センサーとして同定し,PLPが酸素濃度に応じて調節されることを見出した.慢性的な低酸素では,PLPの減少に伴いPLP依存性代謝が抑制されることから,低酸素がもたらす病態を新たな視点から理解することが可能になるものと期待される.

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