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特集 科学的根拠に基づくがん検診UPDATE 2025
日本の乳がん検診の問題点と解決策
Breast cancer screening in Japan
――Issues and solutions
植松 孝悦
1
Takayoshi UEMATSU
1
1静岡県立がんセンター乳腺画像診断科
キーワード:
公正な乳がん検診
,
外的妥当性
,
マンモグラフィ検診
,
J-START
,
高濃度乳房
Keyword:
公正な乳がん検診
,
外的妥当性
,
マンモグラフィ検診
,
J-START
,
高濃度乳房
pp.971-977
発行日 2025年3月22日
Published Date 2025/3/22
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292120971
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日本では25年間にわたってマンモグラフィ検診が実施されてきたが,乳がん死亡率の減少は確認されていない.これは,欧米のエビデンスを外的妥当性の検討なしに日本人女性に適用した結果が大きな要因である.欧米のマンモグラフィ検診のランダム化比較試験(RCT)のエビデンスは,乳房構成が異なる日本人女性には直接適用できない.日本人女性は高濃度乳房の割合が高く,40代日本人女性のマンモグラフィ検診単独の感度は47%であり,マンモグラフィによる乳がん検診は偽陰性や過少診断のリスクが高い.日本人女性を対象とした唯一のRCTであるJ-STARTは,超音波を併用することで乳がん検診の感度が改善することを証明した.J-STARTは乳がん死亡率の減少効果を証明していないが,日本人女性に対するRCTであり,外的妥当性のない欧米のRCTのエビデンスを外挿するよりも重要で意義がある.受診率も47%と低く,死亡率減少効果のない要因のひとつであるが,科学的根拠に基づく正確な数値ではない.次世代の乳がん検診はこれまでの平等な乳がん検診ではなく,高濃度乳房の女性にも配慮し,乳がん検診を受けるすべての女性が最善の結果,すなわち乳がん死を回避できる,“公正” な乳がん検診プログラムを提供する必要がある.そして,感度(特異度)や受診率といった直接的な指標を把握できる科学的根拠に基づく乳がん検診プログラム(組織型乳がん検診)でなければならない.

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