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乳がんの発症リスクと予防
米国では,一生涯のうちに全女性の約7人に1人が乳がんになるといわれ,国を挙げての乳がん対策が進んでいる.先進国のなかでは乳がんが少ないといわれた日本(現在約20人に1人)でも,女性が罹患するがんの第一位となり,年間40000人以上が乳がんに罹患し,右肩上がりの状況にある.罹患率でみると,米国は日本人の約3倍であり,明らかに人種差があるように思われがちであるが,ハワイあるいは,サンフランシスコやロサンゼルスに在住の日系人では,米国人に近い罹患率であるといういくつかの報告がある.また,日本人の罹患年齢のピークが40歳台後半になだらかなピークがあるのに対して,欧米では,60歳台であり,年齢を経るに従い上昇するという違いがある.すなわち,欧米では,ホルモン感受性のある閉経後乳がんが多い.米国では,2003年以降,乳がんの罹患率も減少基調にあるが,その背景には,2002年以降,ホルモン補充療法が乳がん発症リスクに関与すること等が明らかとなって著減した(それまで,年間5,000万処方が5分の1以下となった)ことが背景にあることが示唆されている.一方,日本人の罹患率の上昇は,昭和30年代に比べて,高カロリー,高脂肪食となり,肥満者の割合が,とくに高齢女性で増えていることが要因の1つと考えられる.閉経後の肥満は,IGF(Insulin Growth Factor)を介した増殖のメカニズムや,末梢脂肪組織において女性ホルモン産生を促すアロマターゼ活性の上昇が関与しているといわれている.したがって,高脂肪食や過度の飲酒を避け,適度な運動とともに適正体重を維持すること,すなわちメタボリック・シンドロームへの対策は,乳がんの予防にもつながるものと考えられている.
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