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1.はじめに
欧米では,乳癌罹患率は増加しているが,乳癌死亡率は減少している1).この乳癌死亡率低下の原因は,マンモグラフィによる乳癌検診の普及により早期乳癌が増加したことやEBMに基づいた術後補助療法が行われるようになったことが挙げられている.一方,わが国では,女性乳癌死亡・罹患率ともに増加しており2),2000年3月の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(老健第65号)や2004年4月の改訂(老老発第0427001号)の通達により,40歳以上女性のマンモグラフィ導入検診が勧告され,やっとマンモグラフィ検診がスタート台に立ったところである.
癌の二次予防としての乳癌検診の目的は,早期発見することによる対象の乳癌死亡の減少にある.欧米では,前述のごとく,1990年以降の十数年間に20~30%の乳癌死亡率低下がみられている.マンモグラフィによる乳癌検診受診率が70~80%に及び,早期乳癌の増加による乳癌死亡の減少が統計で明らかにされ,乳癌検診の目的がすでに達せられているといえる.
さて,マンモグラフィ検診には,高品質のマンモグラムで,精度の高い読影を行うことが必須条件であり,そのための精度管理が重要である.米国では,1992年にMQSA(Mammography Quality Standard Act, Public Law 102-539)が制定され,マンモグラフィ導入施設の精度管理の徹底が実現されているが,わが国ではマンモグラフィ検診の精度管理に関する法的な制限はない.筆者らは,わが国での乳癌検診にマンモグラフィを導入するに当たって,マンモグラフィ検診精度管理中央委員会(以下,精中委)を設置し,精度管理の活動を進めてきた.本稿では,精中委の設立経緯や活動状況を紹介し,わが国の乳癌検診の現状と課題について述べる.
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