Japanese
English
TOPICS 生化学・分子生物学
天然の遺伝子治療薬として働く4.5SH RNA
4.5SH RNA as a natural gene therapeutic
中川 真一
1
,
芳本 玲
2
Shinichi NAKAGAWA
1
,
Rei YOSHIMOTO
2
1北海道大学大学院薬学研究院創薬科学部門
2摂南大学 農学部応用生物科学科
pp.915-916
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292110915
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4.5SH RNAとは
4.5SHは1970年代にわが国の原田文夫博士によって配列が決定された古典的なRNAであり1),全長90塩基,RNAポリメラーゼⅢによって転写され,その転写産物はスプライシング因子が濃縮する核スペックルとよばれる核内構造体に濃縮する(図1-A).4.5SHの配列は,マウスゲノムのなかでも最もコピー数が多いレトロトランスポゾンであるSINE B1と非常によく似ており,塩基配列レベルで90%以上の相同性を持つ.4.5SHの発現量は非常に高く,細胞あたり10,000分子以上存在しており,この数はrRNA(ribosomal RNA)やtRNA(transfer RNA)には及ばないものの,一般的な遺伝子のmRNA(messenger RNA)に比べればはるかに多い.また,4.5SHはマウスやラットなどの小型齧歯類では保存されているものの,それ以外の哺乳類,たとえばヒトには存在しない.重要な遺伝子は種間で広く保存されているもの,という分子生物学の「常識」からは外れた存在であったためなのか,4.5SHを研究対象とした論文はほとんど報告されておらず,発見以来半世紀近く,その機能は謎に包まれていた.
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