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第1土曜特集 神経変性疾患の分子病態解明と治療法開発
疾患別の最新研究
多系統萎縮症の分子病態と治療開発
Molecular pathogenesis and therapeutic development in multiple system atrophy
三井 純
1
Jun MITSUI
1
1東京大学大学院医学系研究科プレシジョンメディシン神経学講座
キーワード:
多系統萎縮症(MSA)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
COQ2遺伝子
,
コエンザイムQ10(CoQ10)
Keyword:
多系統萎縮症(MSA)
,
ゲノムワイド関連解析(GWAS)
,
COQ2遺伝子
,
コエンザイムQ10(CoQ10)
pp.738-743
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292090738
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多系統萎縮症(MSA)は,多系統の神経系に障害をもたらす孤発性神経変性疾患である.運動機能の障害のみならず,患者の生活の質(QOL)を大きく損なう神経難病であり,その遺伝的背景は未解明の部分が多い.シヌクレイノパチーのひとつに分類され,パーキンソン病で確立した関連遺伝子がMSAでも関連するのではないかと候補遺伝子アプローチが行われてきた.近年では,網羅的なゲノムワイド関連解析(GWAS)の報告が増えてきたが,MSAの遺伝率の低さ,集団ごとの遺伝的異質性が推定されており,個々の研究で報告されている関連遺伝子の意義は十分に確立されていない.多発家系の解析から同定されたCOQ2遺伝子は,欧米の集団では変異が乏しいために検討が難しく,東アジアを中心に追試・メタ解析が行われ,関連が確立していると考えられる.筆者らは,COQ2遺伝子の発見をもとに還元型コエンザイムQ10(CoQ10)を用いた治療開発を開始し,第Ⅱ相試験ではMSAの運動症状進行抑制に一定の効果が期待される結果を得た.孤発性神経変性疾患においても,ゲノム研究による分子病態の理解と,それに基づく治療開発が実現するのではないかと期待している.

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