Japanese
English
特集 量子生命科学の医学領域への展開
量子センサーと分光学を用いた相分離液滴の構造ダイナミクス研究
Structural dynamics studies of phase-separated droplets using quantum sensors and spectroscopy
加藤 昌人
1,2
Masato KATO
1,2
1University of Texas Southwestern Medical Center, Department of Biochemistry
2量子科学技術研究開発機構 量子生命科学研究所
キーワード:
Low-complexity domain(LCD)
,
細胞内相分離
,
神経変性疾患
,
クロスβ線維
,
中性子散乱
,
円二色性(CD)
,
ラマンスペクトル顕微鏡
,
量子センサー
,
高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)
Keyword:
Low-complexity domain(LCD)
,
細胞内相分離
,
神経変性疾患
,
クロスβ線維
,
中性子散乱
,
円二色性(CD)
,
ラマンスペクトル顕微鏡
,
量子センサー
,
高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)
pp.303-308
発行日 2024年7月27日
Published Date 2024/7/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu290040303
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近年,筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTDL)などの神経変性疾患を引き起こす原因タンパク質として,変異を持つTDP-43やFUSなどのRNA結合タンパク質が同定されてきた.これらのタンパク質には,LCDというアミノ酸の組成が著しく偏った配列領域が存在し,病原性変異はこのLCDに多くみつかっている.LCDはその強い自己相互作用能力で液-液相分離を引き起こし,これらのRNA結合タンパク質が取り込まれるストレス顆粒などの細胞内非膜性構造体形成の主要な駆動力として働いている.病原性変異は多くの場合,LCDの自己相互作用を強め,ストレス顆粒を足場に線維凝集体形成を促進すると考えられている.LCDの相分離機構や病原性変異がそれに及ぼす影響を解析することが,病原機構解明に向けて必須であるが,LCDが作る相分離液滴はやわらかく,研究することが難しい.そのため筆者らは,試料に直接触れる必要のない分光学的手法と単一液滴の物性を観測できる量子センサー,および1分子のLCDの動きをリアルタイム観測できる高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を組み合わせて,LCDの相分離メカニズムを解明しようと試みている.
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