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特集 脂質多様性の生物学と疾患制御
加齢に伴う脂質代謝変容とその生物学的解釈
Lipidome changes associated with aging and their potential biological interpretation
津川 裕司
1,2,3
,
有田 誠
1,2,4,5
Hiroshi TSUGAWA
1,2,3
,
Makoto ARITA
1,2,4,5
1理化学研究所生命医科学研究センターメタボローム研究チーム
2横浜市立大学大学院生命医科学研究科代謝エピゲノム科学研究室
3東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門システムバイオロジー分野
4慶應義塾大学薬学部代謝生理化学講座
5同WPI-Bio2Q
キーワード:
加齢変容
,
脂質代謝
,
ノンターゲットリピドミクス
Keyword:
加齢変容
,
脂質代謝
,
ノンターゲットリピドミクス
pp.788-795
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.32118/ayu289110788
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加齢は生物が生きた時間を意味する言葉であり,避けられない自然なプロセスである.一方,加齢する生物(本稿ではマウス)を用いて研究することは,寿命,老化,慢性炎症,加齢関連疾患といったさまざまな生命現象の分子メカニズムを解明するうえで重要な基礎的情報を得ることにつながる.加齢に伴う代謝変容はこれまで多くの研究者によって進められており,解糖系,ペントースリン酸経路,クエン酸回路,レドックス関連代謝物の代謝リプログラミングと加齢によって引き起こされる機能変化の関連性が明らかにされてきた.一方,脂質代謝については脂肪酸や主要な細胞膜構成リン脂質,およびエネルギー貯蔵に関与する中性脂質変容の知見はあるものの,いまだ限定的な情報にとどまっているのが現状である.そこで筆者らは,近年開発した生体内の脂質多様性をアンバイアスかつ網羅的に解析することが可能なノンターゲットリピドミクス技術を用いて,大規模なマウス主要組織の加齢に伴う脂質代謝変容の解析を行った.本研究にて,腸内細菌の有無によって特徴的に変動する脂質代謝物や雌雄差が顕著にみられる臓器,および全組織・条件によって共通して認められる加齢代謝変容など,多くの知見が得られたため,これまで報告されている最新の知見と合わせて本稿で紹介する.
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