Japanese
English
特集 活性酸素と酸化ストレス
放射線障害と酸化ストレス
Radiation damage and oxidative stress
松本 謙一郎
1
,
中西 郁夫
2
,
伊藤 紘
2
Ken-ichiro MATSUMOTO
1
,
Ikuo NAKANISHI
2
,
Hiromu ITO
2
1量子科学技術研究開発機構量子生命・医学部門放射線医学研究所
2同量子生命科学研究所
キーワード:
電離放射線
,
酸化障害
,
フリーラジカル
,
活性酸素(ROS)
,
ヒドロキシルラジカル(・OH)
,
過酸化水素(H2O2)
,
放射線防護剤
Keyword:
電離放射線
,
酸化障害
,
フリーラジカル
,
活性酸素(ROS)
,
ヒドロキシルラジカル(・OH)
,
過酸化水素(H2O2)
,
放射線防護剤
pp.271-274
発行日 2024年4月27日
Published Date 2024/4/27
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28904271
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放射線は分子から電子を弾きだす(電離する)ことができる.電離された分子は電子を失うので強制的に酸化された状態になる.放射線は水分子を電離あるいは励起し,水分子を分解して活性酸素(ROS)あるいはフリーラジカルとして知られるいくつかの活性種を生成し,これらの活性種が他の分子を酸化する.放射線が生体に作用する際,放射線が細胞内の機能分子を直接電離することにより分子機能が障害されることを直接作用,水の放射線分解を介して生じた活性種が機能分子と反応して障害することを間接作用という.放射線が水を分解して生じる活性種の局所分布は均一ではなく,放射線の軌跡上にmM~Mという比較的高い局所濃度で生じる.生体内の比較的低酸素の環境で生じた高濃度過酸化水素(H2O2)は高い酸化力を持ち,放射線が生体に与える酸化ストレスに深く関わっている可能性が憂慮される.放射線障害は,放射線がトリガーとなって引き起こされる酸化ストレスの結果ということができる.
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