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連載 臨床医のための微生物学講座・Vol.8
腸球菌
Enterococcus
富田 治芳
1,2
,
久留島 潤
2
,
橋本 佑輔
1
Haruyoshi TOMITA
1,2
,
Jun KURUSHIMA
2
,
Yusuke HASHIMOTO
1
1群馬大学大学院医学系研究科細菌学
2同薬剤耐性菌実験施設
キーワード:
腸球菌
,
院内感染症
,
バンコマイシン耐性
,
VRE
,
伝達性プラスミド
Keyword:
腸球菌
,
院内感染症
,
バンコマイシン耐性
,
VRE
,
伝達性プラスミド
pp.156-163
発行日 2024年4月13日
Published Date 2024/4/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28902156
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◎グラム陽性の腸球菌は動物の腸管内に常在し,自然環境中にも広く存在する.腸球菌は典型的な日和見感染菌(弱毒菌)として生体防御能が低下した易感染宿主に尿路感染症,胆道感染症,心内膜炎,菌血症などの感染症を引き起こす.臨床分離株の約7割がE. faecalisで,他はE. faeciumが主である.近年の抗菌薬使用量増加と高度先進医療に伴い,多剤耐性化した腸球菌による日和見感染症が増加している.特にMRSA治療薬であるバンコマイシンに耐性を獲得したバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が問題となっている.VREの多くは多剤耐性であり,有効な治療薬が存在しないこともありうる.VREには複数の耐性型が存在するが,欧米および近隣諸国においては主にVanA型VRE(E. faecium)が医療環境に蔓延し,院内感染症として深刻な問題となっている.日本ではVRE感染症は5類感染症(全数把握)として,年間100例前後の症例数で推移していた.近年は増加傾向にあり,分離される地域の拡大,分離施設数の増加を認め,今後の蔓延が危惧されている.VRE対策としては院内感染対策(接触予防策)の徹底,抗菌薬の適正使用(抗菌薬スチュワードシップ)および医療従事者の教育が重要である.
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