Japanese
English
特集 精神疾患における環境要因と遺伝-環境相互作用
はじめに
Introduction
池田 匡志
1
Masashi IKEDA
1
1名古屋大学大学院医学系研究科精神医学
pp.549-549
発行日 2024年2月17日
Published Date 2024/2/17
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28807549
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
精神疾患のほとんどは,遺伝要因と環境要因が関与して発症する複雑疾患であることはよく知られている.実際,古くから遺伝疫学的研究は多数行われてきており,統合失調症や双極性障害の遺伝要因の指標である遺伝率は80%程度,うつ病のそれは40%程度と概算されている.20世紀は分子遺伝学的研究を実施するための技術的な制限があったため,それ以上の進展はめだたず,他方,環境要因を調べる研究の方が確からしい結果を創出していたと考えられる.しかし,2000年以降の安価なDNAマイクロアレイの開発,そして最近では次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)による全エクソーム解析(whole exome sequencing:WES)/全ゲノム解析(whole genome sequencing:WGS)の進展により,頻度の高い遺伝子多型から頻度の低い変異までさまざまな,そしてピンポイントな “遺伝要因” が同定されてきている.さらにゲノムワイド関連解析(genome wide association study:GWAS)の結果を総体的にとらえ,“小さなeffect sizeが相加的に疾患発症に寄与する” と考えるポリジェニックモデルも精神疾患にフィットすることが証明された.
Copyright © 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.