Japanese
English
第1土曜特集 老化を標的とした疾患予防・治療
総論
細胞膜損傷を起点とする新たな老化細胞サブタイプ
A novel senescent cell subtype triggered by plasma membrane damage
河野 恵子
1
,
森山 陽介
2
Keiko KONO
1
,
Yohsuke MORIYAMA
2
1沖縄科学技術大学院大学膜生物学ユニット
2同サイエンスアンドテクノロジーアソシエイト
キーワード:
細胞老化
,
細胞膜損傷
,
細胞膜修復
,
p53
,
創傷治癒
Keyword:
細胞老化
,
細胞膜損傷
,
細胞膜修復
,
p53
,
創傷治癒
pp.327-331
発行日 2023年11月4日
Published Date 2023/11/4
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28705327
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細胞老化は,Hayfilckらにより1960年代に培養皿上でのヒト正常線維芽細胞の恒久的増殖停止として見出された.この現象の発見当初は,Carrelらの主張する個体外に取り出した細胞の増殖は無限であるというドグマが支配的であったことから,細胞老化はアーティファクトとされたが,それからさらに60年以上の時を経た現在では,老化細胞が生体内に存在し,さまざまな生理的・病理的機能を果たすことは広く受け入れられている.特に近年は,老化細胞除去薬(セノリティクス)により生体内の老化細胞に細胞死を起こさせると,さまざまな加齢性疾患の病態を改善することが続々と報告されている.老化細胞の機能については急速に理解が進みつつある一方で,生体内における細胞老化の引き金についてはいまだ不明な点が多く残されている.培養皿上では,細胞老化はさまざまなストレスにより誘導される.特にDNA損傷,テロメア短縮,がん遺伝子活性化などをはじめとするDNAの変化を起点として誘導される細胞老化については理解が進んでいる.一方で,筆者らは最近,細胞膜損傷が起点となり,DNAの変化による老化細胞とは異なるサブタイプの老化細胞が誘導されることを見出した.本稿では,細胞膜損傷による細胞老化の誘導機序を紹介し,その生体内における意義について考察する.
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