Japanese
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第5土曜特集 細胞死のすべて――そのメカニズムと,生命現象・疾患との関わり
疾患と細胞死
がんの細胞死回避戦略としてのワールブルグ効果とカルジオリピン代謝を制御するMieap液滴について
Warburg effect as a strategy for cancer cells to escape cell death and Mieap liquid droplets involved in regulation of cardiolipin metabolism
荒川 博文
1
Hirofumi ARAKAWA
1
1国立がん研究センター研究所腫瘍生物学分野
キーワード:
液滴
,
相分離
,
非膜オルガネラ
,
カルジオリピン
,
代謝反応
,
ワールブルグ効果
,
p53
,
がん抑制
Keyword:
液滴
,
相分離
,
非膜オルガネラ
,
カルジオリピン
,
代謝反応
,
ワールブルグ効果
,
p53
,
がん抑制
pp.469-479
発行日 2022年10月29日
Published Date 2022/10/29
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28305469
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膜のないオルガネラとしての液滴は,液-液相分離によって誘導される.p53誘導性タンパク質Mieapはミトコンドリアに液滴を形成する.最近,このMieap液滴が非膜オルガネラとして,カルジオリピン代謝連続反応を区画化し促進することが明らかになった.カルジオリピンはミトコンドリアに特異的なリン脂質であり,呼吸鎖タンパク質やBaxなど,多くのミトコンドリアタンパク質と結合し,それらの足場となることで,酸化的リン酸化反応によるエネルギー産生やアポトーシス誘導など,ミトコンドリア機能発現に重要である.したがって,p53やMieapの異常はカルジオリピン代謝反応に障害をきたし,呼吸鎖からのエネルギー産生を低下させ,アポトーシスを抑制する.好気的解糖系の亢進という,がんに普遍的な性質であるワールブルグ効果はカルジオリピン代謝反応の抑制によって生じ,がんの細胞死回避のための戦略となっている可能性がある.Mieap液滴を人為的に制御できれば,カルジオリピン代謝反応活性化を介した新規がん治療法開発につながる.
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