Japanese
English
第1土曜特集 五感を科学する――感覚器研究の最前線
聴覚
加齢性難聴とその予防
Age-related hearing loss and its prevention
山岨 達也
1
Tatsuya YAMASOBA
1
1東京大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室
キーワード:
騒音下聴取
,
認知
,
酸化ストレス
,
補聴器
,
人工内耳
Keyword:
騒音下聴取
,
認知
,
酸化ストレス
,
補聴器
,
人工内耳
pp.663-668
発行日 2022年8月6日
Published Date 2022/8/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28206663
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
加齢性難聴は聴力閾値の上昇,語音聴取能の低下,音源認知の障害などを特徴とし,認知症の修正可能な危険因子として最も影響が大きい.発症時期や重症度には個人差があり,遺伝的要因,騒音曝露歴,喫煙,糖尿病・循環器疾患などの合併が影響する.蝸牛内の酸化ストレスを引き金にしたミトコンドリアDNAの損傷集積が有毛細胞など再生できない重要細胞の細胞死を誘導するという発症機序が動物実験などから提唱されている.予防には蝸牛内のフリーラジカル過剰産生の抑制が重要であり,強大音曝露の回避,非喫煙・禁煙,動脈硬化の予防・介入,抗酸化物質の摂取,カロリー過剰摂取の抑制,有酸素運動などが期待されている.聴覚閾値の改善はできないが.聴覚に基づく認知訓練に(特に騒音下での)言葉の聞き取り改善効果が期待されている.聴取が困難となり,生活上支障のでる場合は補聴器装用が認知機能低下予防の観点からも勧められ,重度の難聴に進行した場合は人工内耳も適応となる.
Copyright © 2022 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.