Japanese
English
第5土曜特集 小児医療の最先端
臨床編
血液脳関門通過型酵素治療法
-――脳を標的としたムコ多糖症Ⅱ型に対する新たな治療戦略
The novel brain targeting strategy for neuropathic mucopolysaccharidosis type Ⅱ
――A blood-brain-barrier penetrating enzyme replacement therapy
瀬戸 俊之
1
Toshiyuki SETO
1
1大阪公立大学大学院医学研究科臨床遺伝学,同発達小児医学,同医学部附属病院ゲノム医療センター・ゲノム診療科
キーワード:
ムコ多糖症(MPS)
,
知能障害
,
血液脳関門(BBB)
,
酵素補充療法(ERT)
,
トランスフェリン受容体(TfR)
Keyword:
ムコ多糖症(MPS)
,
知能障害
,
血液脳関門(BBB)
,
酵素補充療法(ERT)
,
トランスフェリン受容体(TfR)
pp.449-455
発行日 2022年7月30日
Published Date 2022/7/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28205449
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
脳・脊髄は,その恒常性を維持するために血液脳関門(BBB)によって中枢神経系以外の血液循環から部分的に隔絶されている.BBB通過型酵素治療法とは,通常ではBBBを通過できない薬剤を経静脈投与下でもBBBを通過して神経細胞に到達しえることを可能にした最新の治療法である.本治療法の対象となる疾患はライソゾーム病(LSDs)のひとつであるムコ多糖症Ⅱ型(MPSⅡ)であり,その半数以上が進行性の知能障害を呈する難病である.従来の酵素補充療法は末梢血内に投与された酵素がBBBを通過できないために神経症状にはまったく無効であった.本治療法に用いられる薬剤は,脳内の血管内腔側の内皮細胞壁に発現しているトランスフェリン受容体(TfR)に結合しトランサイトーシスを生じさせる抗体に欠損酵素を融合させた分子であり,2021年,MPSⅡに対する治療として全世界に先がけて日本で保険収載された.いったん障害を受けた神経細胞を回復させることは困難だが,早期診断・早期投与によってMPSⅡ重症型小児の知的予後の改善がどれほど得られるか,今後の検討課題である.
Copyright © 2022 Ishiyaku Pub,Inc. All Rights Reserved.