特集 ここまで来た! 新生児マススクリーニングと対象疾患の治療
先天代謝異常症の最新治療
血液脳関門を克服した酵素補充療法
小須賀 基通
1
KOSUGA Motomichi
1
1国立成育医療研究センター遺伝診療科
pp.1848-1851
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002176
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はじめに
酵素補充療法(enzyme replacement therapy:ERT)は,遺伝子組み換え操作で作製した酵素蛋白製剤を体外から体内に定期的に補充する治療法である。現在,ライソゾーム病のうちゴーシェ病,ポンペ病,ファブリー病,ムコ多糖症Ⅰ,Ⅱ,ⅣA,Ⅵ,Ⅶ型,ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症,セロイドリポフスチン症2型(CLN2)に対して,ERTによる治療が可能である。点滴により経静脈的に投与された酵素蛋白製剤は,末梢の血流が豊富な臓器や組織の症状改善や進行抑制の有効性を認める。一方,脳の血管は密接に結合した内皮細胞によって裏打ちされた血液脳関門(blood brain barrier:BBB)を形成しており,血液と脳組織間で必要な物質輸送を行う一方,不要な物質の侵入に対するバリア構造としても機能しているため,高分子蛋白である酵素蛋白製剤はBBBを通過できないことから,ライソゾーム病の中枢神経症状では十分な治療効果が得られなかった1)。近年,中枢神経症状に対する治療効果を目指した新たな酵素蛋白製剤として,BBB通過能を有する酵素蛋白製剤と脳室内投与の酵素蛋白製剤が2021年にそれぞれ使用可能となった。
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