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はじめに
視床下部の室傍核や視索上核で産生される下垂体後葉ホルモンの一つであるバゾプレッシン(arginine vasopressin,以下AVP)は,1950年代のはじめ,最初に発見された神経ペプチドであり,9個のアミノ酸からなることが明らかにされて以来,その薬理作用について広く研究されてきた。その一つは腎における抗利尿作用であり,もう一つは中枢神経作用である。AVP合成能を遺伝的に欠くBrattleboroラットでは条件づけられた回避行動の獲得や保持が障害されているが15),AVPを末梢性あるいは中枢性に投与すると学習効果が大きく改善すること7),マウスの脳室内にAVPを投与すると過剰運動がみられ,ラットでは痙攣様運動がみられるほか,発熱時の体温調節にもAVPが関与している36)ことが知られている。このような事実からAVPは神経伝達物質あるいはニューロモジュレーターとしての作用も有すると考えられている。神経ペプチドあるいはその拮抗薬を末梢性に投与して,中枢神経機能異常を治療しようとする試みがなされているが37,38),脳毛細血管床の99%を占める13)血液脳関門(blood-brain barrier,以下BBB)を容易には通過しないこと45,47)から,中枢神経へこれらの物質の伝達がどのように行われているか,多くの研究が積み重ねられてきた。
Arginine vasopressin (AVP) has been known to exert antidiuretic action at the kidney and some neuroactive effects. In order to examine the neural effect of AVP, it is essential to clarify the mecha-nism of BBB transport from intraluminal side to brain. Recent basic experimental data show the most possible mechanism for the transport of peripheral AVP across the BBB is binding of V1 receptor of AVP at the capillary luminal membrane and consequently transports AVP to neuronal cell and changes in permeability of amino acid, ion and water at the BBB.
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