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第5土曜特集 腫瘍免疫――免疫ネットワークから考える基礎と臨床
ネットワークの各因子と,その因子を応用or標的とした基礎研究の現在と可能性
【がん免疫ネットワークに影響を与える因子】
腫瘍細胞からネットワークへ
-――遺伝子変異とサイトカインネットワークによる腫瘍微小環境の形成と制御
Network from tumor cells
――generation and regulation of tumor microenvironment through gene mutations and cytokine network
魏 菲菲
1
,
笹田 哲朗
1
Feifei WEI
1
,
Tetsuro SASADA
1
1神奈川県立がんセンター臨床研究所がん免疫療法研究開発学部
キーワード:
腫瘍細胞
,
遺伝子変異
,
サイトカイン
,
ケモカイン
,
腫瘍微小環境(TME)
Keyword:
腫瘍細胞
,
遺伝子変異
,
サイトカイン
,
ケモカイン
,
腫瘍微小環境(TME)
pp.374-380
発行日 2022年4月30日
Published Date 2022/4/30
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28105374
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腫瘍細胞は特異的な遺伝子変異の蓄積により出現する.Wnt/β-カテニン経路・MYC遺伝子の活性化やPTEN・P53遺伝子の不活化などのドライバー遺伝子変異は,腫瘍細胞自体の悪性化形質に直接影響するほかに,免疫抑制因子(PD-L1など)・免疫抑制細胞を誘導したりエフェクター細胞の活性化・浸潤を抑制することで,腫瘍増殖に有利な腫瘍微小環境(TME)を形成する.TMEは,腫瘍細胞と周囲の非腫瘍細胞(免疫細胞,間質細胞,上皮細胞,内皮細胞など)との相互作用や,それに伴い分泌されるさまざまなサイトカインなどによって制御される.サイトカインには,IL-1・IL-6などの慢性炎症を誘発し腫瘍促進免疫(pro-tumor immunity)に関与するものと,IL-2・IL-15などのエフェクター細胞の活性化を誘導し抗腫瘍免疫(anti-tumor immunity)に関与するものとが存在する.また,ケモカインおよびその受容体も各種免疫細胞の浸潤を制御することでTME形成に中心的な役割を果たす.今後は,TME形成・制御に関与する遺伝子変異やサイトカインネットワークなど各種因子を総合的に理解することで,腫瘍のサブタイプ分類や個別化がん免疫治療への展開が期待される.
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