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特集 臓器移植――限界と挑戦
Transplant Oncologyが拓くがん治療の未来
Transplant oncology: The future of cancer treatment we envision
日比 泰造
1
Taizo HIBI
1
1熊本大学大学院生命科学研究部小児外科学・移植外科学講座
キーワード:
Transplant oncology
,
肝胆道がん
,
肝移植
,
切除可能性
,
oncological eliminability
Keyword:
Transplant oncology
,
肝胆道がん
,
肝移植
,
切除可能性
,
oncological eliminability
pp.688-698
発行日 2021年11月13日
Published Date 2021/11/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27907688
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Transplant oncologyは,移植医学と腫瘍学を融合させることでがんの診療・研究を飛躍的に発展させる概念としてわが国より提唱された.①集学的治療の進化,②がんの切除限界の拡大,③自己・非自己認識システムの解明,④がん免疫ゲノミクスによる本態探究の4つの柱のうち,この論考では主に①に焦点をあてて肝細胞癌,胆道癌,転移性肝がんにおける概念実証を行う.かつて切除不能な肝胆道がんに対する肝移植はきわめて予後不良であり,肝細胞癌(および小児の肝芽腫)を例外として絶対的禁忌とされていたが,欧米の臨床研究の結果から厳格な患者選択のもとで移植を行うことで完全治癒が期待しえる患者群が存在することが明らかとなった.Transplant oncologyの概念が導入され,これまでの生命維持に必須の自己肝の温存を自明とした技術的な(狭義の)切除可能性(technical resectability)から,腫瘍学的な(広義の)切除可能性を意味する根絶可能性=oncological eliminabilityの議論へと意識を変容させる新たな時代を迎えた.
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