連載 ユニークな実験動物を用いた医学研究
はじめに
-――伝統や形式からの自由
花園 豊
1
Yutaka HANAZONO
1
1自治医科大学先端医療技術開発センター
pp.1001-1001
発行日 2021年9月11日
Published Date 2021/9/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu278111001
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医学部の動物実験の90%以上はマウスを用いた実験だから,マウスが主流でそれ以外は傍流という感じられ方は確かにある.そのようななかで今回『医学のあゆみ』で「ユニークな実験動物を用いた医学研究」をテーマに連載をはじめることになった.私事で恐縮ながら,筆者は1995年,アメリカ国立衛生研究所(NIH)へ遺伝子治療研究を目的に留学した.留学先ではボスのシンシア・ダンバー博士(後のアメリカ遺伝子治療学会会長)から,サルを使った遺伝子治療実験を指示された.マウス実験でうまくいった遺伝子治療を人間で試みたところ,ことごとく失敗したためである.まさかアメリカまで来てサルの実験をやるとは思ってもみなかったが,いざやってみるとマウスと違って人間を忠実に反映するデータが得られることがわかり,次第にはまっていった.これがその後の研究人生を決定づけようとは,夢みがちだった筆者ですら夢にも思わなかった.1998年に帰国してからもサルの実験を続け,ヒツジ,ブタと動物種を増やして現在に至っている.動物のさまざまな生命現象は遺伝子だけでなく,サイズにも拘束されている1).マウスから人間への橋渡しとして,サイズが人間に近いサルやブタを用いる研究は必要である.
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