連載 ユニークな実験動物を用いた医学研究・Vol.1
絶滅危惧種アマミトゲネズミ
-――メスの細胞から精子が生じる柔軟性
本多 新
1
Arata HONDA
1
1自治医科大学医学部先端医療技術開発センター
キーワード:
絶滅危惧種
,
アマミトゲネズミ
,
iPS細胞
,
異種間キメラ
,
性決定
Keyword:
絶滅危惧種
,
アマミトゲネズミ
,
iPS細胞
,
異種間キメラ
,
性決定
pp.1002-1006
発行日 2021年9月11日
Published Date 2021/9/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu278111002
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Summary
性の多様性について柔軟性が高まってきた昨今の人間社会は,男女の差別をなくそうという機運(ジェンダーフリー)や,そもそも性別という概念さえなくしてしまおう(ジェンダーレス)といった声が認知されてきた.しかしながら,このような性別は心の性に起因する区分であり,性染色体構成に由来する体の性別については発生学的に固定化されている.ヒトを含むほとんどすべての哺乳類はY染色体があればオスになり,なければメスになる.ところが,体の性を性染色体構成に依存することなく明確に区別するネズミがいる.奄美大島に生息する国の天然記念物で絶滅危惧種のアマミトゲネズミは,きわめてまれな性染色体構成(雌雄ともにXO型)であり性染色体に依存せず雌雄が決まる.そのような性の垣根が不明瞭な動物種における “性” とはどのようなものであろうか.尾部先端からわずかに増やした体細胞からiPS細胞を樹立し,アマミトゲネズミ特有の性的柔軟性に迫る.
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