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第1土曜特集 My Medicine(マイ・メディシン)――オルガノイド研究が拓く新しい医療のかたち
癌研究の観点から
膵癌オルガノイドによる個別化医療の可能性と問題点
Possibilities and problems of personalized medicine based on pancreatic cancer organoids
清野 隆史
1
Takashi SEINO
1
1慶應義塾大学医学部消化器内科
キーワード:
膵癌オルガノイド
,
膵癌エコシステム
,
間質細胞
,
個別化医療
Keyword:
膵癌オルガノイド
,
膵癌エコシステム
,
間質細胞
,
個別化医療
pp.603-607
発行日 2021年2月6日
Published Date 2021/2/6
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27606603
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難治性腫瘍の代表である膵癌の治療は,多くの場合に手術適応がないため標準化学療法が実施される.使用する抗癌剤の選択は患者の年齢や全身状態に応じて決定され,現状では患者個別の遺伝情報が反映されることはない.近年,患者の膵癌組織から採取した膵癌細胞を生体外で長期的に培養することが可能となった.膵癌オルガノイドとよばれるこの三次元構造体は,患者膵癌の遺伝情報と表現型を保持した生体外モデルであり,従来のヒト膵癌モデルである膵癌細胞株や患者由来異種移植モデルでは不可能であった患者ごとの疾患モデルを作製することを可能とした.多数例の膵癌オルガノイドを使用した薬剤感受性試験が実施され,膵癌オルガノイドは治療効果の予測指標として妥当であることが実証されている.癌細胞と間質によって構成される膵癌エコシステムの全体像が反映されているわけではなく,患者膵癌の完全なモデル化とはいえないが,現行の画一的治療から患者ごとの個別化医療へ転換するためのツールとして大きな期待が寄せられている.
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