FORUM 書評
『遺伝/ゲノム看護』
山崎 悟
1
1国立循環器病研究センター分子薬理部
pp.249-250
発行日 2021年1月16日
Published Date 2021/1/16
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27603249
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2003年にヒトゲノムシークエンスの完成版が出て以降,いわゆる「ムーアの法則」を超える形でシークエンスコストは加速的に低下し,2014年には「1000ドルゲノム」が達成された.さらに1000ゲノム計画を嚆矢に,近年では民族レベルでのゲノムシークエンスも行われるようになってきており,病原変異をヘルスケアのために追跡することも原理的には可能となってきた.本書『遺伝/ゲノム看護』は,そのような時代背景から出てきた著書といえる.本書の特徴として興味深いのは,遺伝/ゲノム看護を実践している医療従事者と医学監修をしている基礎医学の研究者が共同で本書を作成していることにある.本書を読む限り,ある個人が遺伝/ゲノム看護のすべてを把握するのはおそらく不可能(そのような全能を持つ個人に頼ることは間違い)で,そうであるからこそ,このような看護の集団チームを作ることの重要さが伝わってくる(そして,このような集団作業は日本人に向いている,と私見では思う).他方,少し逆説的なことを書くと,本書では講習会などの啓蒙活動の必要性について言及しているが,医療の中心となる看護師の日々の業務の忙しさを考えると,むしろ本書のようなテキストで個々人の時間の隙間をうまく利用して学んでいくことは非常に現実的な選択であり,見事にその役割を果たしているといえる.
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