連載 Rapid Review & Topics
全ゲノム遺伝子解析
山﨑 暁子
1,4,5
,
程 雷
1
,
因 正信
2
,
藤田 大輔
3
,
白川 太郎
1
Lei Cheng
1
1京都大学大学院医学研究科健康要因学講座健康増進・行動学分野
2九州女子大学家政学部
3神戸大学発達科学部
4Karolinska Institute
5Swiss Federal Institute of Technology
pp.558-561
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100430
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家系を用いた連鎖解析法
全ゲノム解析とは,連鎖解析法に基づく染色体の候補遺伝子座の決定を全染色体レベルで行う手法である.連鎖解析とは,複数の遺伝子座間の連鎖を利用して特定の表現型に関係する染色体上での遺伝子領域を調べる方法である.アレルギーなどの多遺伝子疾患においてしばしば用いられている手法が,兄弟発症症例を用いた罹患同胞対解析である.この解析に用いるゲノム全領域の多型マーカー(CA)nがキットで販売されているので,ゲノム全領域から候補領域を挙げることができる.しかし,この解析手段としているノンパラメトリック解析では,遺伝子の相同的組替えの情報が入っていないため,この方法で絞り込める候補領域は10-20cM(センチモルガン)と考えられている.
1996年に初めてOxford大学のグループが喘息における全ゲノム遺伝子解析を行って以来1),今日まで喘息で10グループ,皮膚炎で3グループ,鼻炎で1グループが家系サンプルを(CA)nマーカーで解析する全ゲノム解析(physical mapping)を行ってきた.したがって喘息に関する研究が最も進んでおり,人種を超えて喘息に関する原因遺伝子座として認められているのは5番,11番,12番染色体の連鎖である.しかし最初の報告以来すでに7年以上が経過したが,この方法論で最終原因遺伝子に到達したのはわずかに1つ2)(adam-33遺伝子と英国人,米国人の喘息)であり,しかもこの遺伝子座は染色体20pに存在し,その他の全ゲノム解析では連鎖が認められなかった領域に存在する.
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