特集 小児外科疾患の発生を考える
鰓弓異常症
三好 直人
1
,
守本 倫子
1
Naoto Miyoshi
1
,
Noriko Morimoto
1
1国立成育医療研究センター耳鼻咽喉科
pp.785-789
発行日 2025年8月25日
Published Date 2025/8/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001272
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はじめに
鰓弓,鰓溝および咽頭囊などの鰓性器官は,顔面・頸部・咽頭の器官へと成熟する胎児期の前駆的な組織である1)。鰓弓の発生段階において遺伝および環境因子によって障害が起こると,鰓弓由来組織の多様な先天異常,すなわち鰓弓異常症が生じる。代表的な例として耳瘻孔や小耳症,顎骨の低形成などがあげられる2)。また,鰓性組織の発生過程で本来なら消失するはずの鰓溝や咽頭囊などが遺残することによって,鰓性瘻孔・囊胞が発生するとされる。代表的な例として,正中頸囊胞(甲状舌管囊胞),側頸囊胞,下咽頭梨状窩瘻などがあげられる。このような疾患を正確に診断し,適切な治療を行うためには,頸部の正常発生過程と疾患の発生機序を関連づけて理解しなければならない。本稿では,鰓性器官の発生,異常症の病態や治療について詳述する。

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